子ども間のいじめによって怪我等を負わせた場合、いじめた子ども自身が刑罰を受けたり(14歳以上の場合)、損害賠償責任(概ね11歳~12歳以上の場合)を負う場合があります。また、いじめた子ども自身が責任を負わない場合は、その親が損害賠償義務を負う場合があります。

私の中学1年になる子どもが、同級生Aから階段から突き落とされ重傷を負いました。いわゆる「いじめ」で、学校の調査によれば、Aから日常的に被害を受けていたことが判明しました。何か法的措置を取ることはできませんか?

ご相談にかかる「いじめ」は、対加害者との関係では通常の傷害事件として考えることができます。従って、刑事・民事両責任の追及が考えられます。

まず刑事責任ですが、大人であれば、人に暴行を加えて怪我させた加害者には傷害罪が成立し、相応の刑事責任を問われることになります。

しかしながら、刑法という法律では、14歳未満の子どもには刑事責任能力がなく、刑事責任を問うことはできないこととされています。

これは、14歳未満の子どもでについては、刑事責任を問うのではなく、矯正教育を通じて更生を図るのが相当だという刑事政策的理由に基づくものです。

従って、Aに刑罰が科されることはありません。

他方、少年については少年法という法律が適用され、教育的見地からなされる保護処分(児童相談所送致など)が付されることがあります。

次に民事責任ですが、「いじめ」による損害について賠償請求をすることが可能です。この損害には治療費等の他に、「いじめ」によりお子さんが蒙った精神的苦痛に対する慰謝料も当然含まれます。

ただ、民事上も責任能力が問題となります。民法という法律では年齢によって一律に責任能力が決められてはいませんので、加害者ごとに個別に判断することになります。民事上の責任能力は「損害賠償など多少とも法律的責任を弁識しうる能力」をいいますが、通常は11~12歳というのが肯定される目安です。

つぎに親の責任ですが、いじめた子の親が刑事責任を問われることは通常考えられません。

民事責任については、A自身に加害責任能力が認められる場合はAが損害賠償義務を負うことになり、その親は原則として責任を負いません。(但し、親の監督義務違反のせいで被害結果が生じたとして、親も責任を負う場合もあります)

一方、Aの加害責任能力が否定されると、A自身は損害賠償責任を負わない代わりに、Aの親がAに対する監督義務違反として賠償責任を負うことになります。

最後に学校等(国公立の場合、国や自治体)の責任ですが、結果発生を予見して回避措置を講ずべき義務があったのにそれをしなかった過失があるといえるときには、教員や学校の義務違反が認められ、学校等が賠償責任を負うことになります。

2020年7月更新