社有車を従業員が無断使用中に事故が起きた場合、また盗難に遭った社有車による事故でも、会社が責任を負う場合があります。

  会社の営業用の社有車を、従業員が会社に無断で休日に私用で運転している際に事故を起こしました。会社は相手方に対する賠償責任を負いますか?

  自賠責法によれば、自動車の所有者は当該車両に対する運行支配運行利益がある場合、賠償責任を負うものとされています。

  設問では業務外で私用に無断使用されていますが、このような場合でも、会社と従業員の人的な関係に着目して、事実上の運行支配及び利益があるとして損害賠償責任が認められています。判例では、会社が机の引き出しの中に保管していたキーを従業員が勝手に持ち出して使用したときでさえも、会社の責任が肯定された判例もあります。

  従って、会社としては社有車の使用規則を定める等して業務外使用を一切禁止するとともに、車のキーを厳重に保管しておくことが必要です。

  社有車が盗難に遭い、盗んだ犯人がその車で事故を起こしました。この場合の会社の責任はどうですか?

  このような場合、会社と犯人とは人的には無関係ですから、原則として運行支配及び利益は認められ難いのですが、なお、会社に社有車の管理に過失があれば、その態様に応じて運行支配及び利益を肯定したり、民法上の不法行為として賠償責任が肯定されることがあります。

  そこで、どの様な場合に管理上の過失があるといえるかですが、例えば、過去の判例では、会社敷地内の駐車であってもキーを付けたままにしておいて盗まれた場合に過失が認められています。

  ただ、社有車が盗まれた場合に、その車が起こした事故は、いつまでも会社が責任を負わなければならないということはもちろんありません。
  仮に会社に管理上の過失があった場合でも、長時間経過後の事故については、会社の責任が否定されることになるでしょう。但し、判例では盗難後18時間が経過した後の事故について会社の責任が認められたケースもあります。そのため、一概に何時間後からは責任が否定されるということは言えません。

  いずれにしろ、少なくとも盗難が発覚したら直ちに警察に届出をしておく必要があります。