会社法上株主総会において取締役と監査役等の役員は株主からの質問に対して説明義務を負います。しかし、この説明義務は無限定なものではなく、会社法上説明を拒否できる場合もあります。

  会社法上、株主総会における役員の説明義務についてはどのように定められていますか?

  会社法は、株主から「特定の事項」について説明を求められた場合に取締役や監査役等の役員に説明義務を課しています。これは、株主総会の報告事項と決議事項につき株主が正確に理解し、議決権を行使するための合理的判断を下すことができるように配慮したものです。質問事項は「特定の事項」でなければなりませんから、抽象的な質問については説明義務はありません。

  また、会社法上、下記の①から⑥までの場合には、説明を拒絶できるものとされています(説明拒否事由)。
①株主総会の目的事項に関しないものである場合
②説明をすることにより株主共同の利益を著しく害するものである場合
③説明するために調査をすることが必要がある場合(但し、株主が事前に質問事項を会社に通知していた場合やその事項について説明するのに必要な調査が著しく容易である場合を除きます。)
④説明することにより会社その他の者の権利を侵害することとなる場合
⑤実質的に同一の事項について繰り返し説明を求める場合
⑥その他正当な理由がある場合

  株主総会で決算事項の承認を受ける際、株主から帳簿について説明するよう求められたのですが、これに応じる義務はありますか?

  決算事項の承認は株主総会の決議事項ですから、説明義務の対象となるようにも思われます。しかし、一般に、会社法及び会社計算規則によって作成される貸借対照表、損益計算書、事業報告書等に記載が要求される事項等については説明義務を負いますが、他方、帳簿については説明義務を負わないと解されています。というのは、前者は株主であれば当然知り得べき情報であるのに対し、後者の帳簿書類は会社法上株式を相当数保有しなければ閲覧できず、帳簿の内容は株主であっても当然には知り得ない情報といえますから、このような情報はいかに議決権行使のためとはいえ、秘密とする会社の利益の方が優先されるためです。

  株主総会招集前に書面で質問事項が提出されましたが、その株主は総会に欠席したので、総会で改めて質問されることはありませんでした。この場合も説明する義務がありますか?

  株主の説明請求権はあくまで株主総会における権利ですから、事前に書面を提出しても、株主総会で現実に質問しない以上は説明義務は生じません。なお、事前に複数の質問事項が提出されるようなことがありますが、この場合総会で一括して説明すれば説明義務は果たされ、改めて個別に説明する義務はありません。

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