相続の法律相談

  当事務所では、相続、離婚、成年後見等家族の問題も数多く取り扱っており、その中でも、相続は、財産のあるなしに関わりなく、誰でも巻き込まれる可能性のあるトラブルの一つです。兄弟姉妹等近い関係だからこそ感情的になって、深刻な争いに発展することもしばしば。このような紛争を予防するために、遺言書を作っておくことが効果的です。

  相続をめぐるトラブルは、決して財産がたくさんある場合にだけ起きるわけではありません。むしろ、「親の面倒もみなかった他の兄弟が、当然のように自分と同じ割合で相続するのは納得がいかない」といった「感情的な不満、対立、不信感」が背景にあってトラブルになるケースが多いようです。

  また、最近では、相続トラブル防止に遺言が有効であることが社会的にも認知され、生前の遺言作成を希望される方が増えてきています。

相続を行いたい高齢者やご家族のからの相談例

「財産としては自宅と田舎の山林くらいしかないが遺言をしておいた方がいいだろうか」

「同居して面倒を見てくれた長男に財産を残したい。どうしたらいいだろうか」

「長男はギャンブルにのめり込み、今もヤミ金から多額の借金をしているようだ。不動産や預貯金を長男に相続させたくない。」

「仲がよかった家族も相続でもめることは珍しくないので、遺言を作っておきたい」

会社経営者からの事業承継に絡む相談例

「会社を経営していたが、長男に承継させたい。どうすればいいか」

  遺言がない場合には、遺産は、法定相続人に法律で定められた割合で平等に分配されます。法律で決まっていればトラブルなど起きないのではないかと思われるかもしれませんが、法律には、自宅や山林、株式等の財産を具体的に誰がどのように取得するのかの規定はなく、遺産の具体的な配分方法をめぐって意見が対立し、トラブルが生じることがあるのです。また、「生前、貯金は全部お前にやると言われた。だから貯金を法定相続人全員で分けることは認めない」等の言い分もよく耳にするところですが、このように被相続人の意思がはっきりしないことが原因でトラブルになることもあります。

これに対して、遺言によって、法律の規定と異なる割合で相続をさせることができます。また、具体的に誰にどの財産を取得させるかも遺言で決めることができます。遺言という書面によって被相続人の意思が明確になることで、相続人も受け入れやすいという効果もあります。このような点で、遺言を作ることは、相続をめぐるトラブルの防止になるのです。

  遺言は、民法の定める方式に従わなければならず、法定の方式に反する遺言は無効です。重病で死期が迫っているような特別な場合を除いて、大きく分ければ、遺言には次の三つの種類があります。

① 自筆証書遺言

  これは、遺言をする人が、遺言書の全文、日付および氏名を全て自分で書いて、これに押印することによって成立する遺言のことです。自分で書くことが必要ですから、パソコンで打ったり、他人に代書させることできません。

【長所】簡単であり、費用もかからない。

【短所】法律の要件を充たしていないと無効となる点や、作成後に滅失・偽造のおそれがあること、死亡後に、検認が必要な点。

※ 検認というのは、遺言を執行する前に、遺言書が法定の方式を満たしているか等を確認する手続で家庭裁判所が行います。

② 公正証書遺言

  公証役場で公証人に作ってもらう遺言のことです。この遺言方法は、最も確実な遺言であるといえます。病気等で遺言をする人が公証人役場まで行けないときは、公証人に出張してもらうことも可能です。 作成された公正証書遺言の原本は、公証人によって保管されますので、紛失したり偽造される心配はありません。

【長所】後日無効とされるおそれは極めて低く、後日の紛争防止や遺言書の保管等が最も確実にできる。

【短所】手続が複雑で費用もかかる点。

③ 秘密証書遺言

  これは、遺言の内容を記載した書面を作成し(この場合は自分で書かなくても構いません)、それに署名押印し、その書面を封入し、書面に押印したのと同じ印鑑で封印し、それを公証人と証人2人以上の面前に提出し、自分の遺言であること、その住所氏名を述べれば、公証人が所定事項を記載し、遺言者、証人が署名押印するものです。

【長所】遺言内容を秘密にしておくことができる。

【短所】手続が複雑であり、費用もかかるうえ、検認が必要。

  遺言内容は、 「遺留分」に注意して作成する必要があります。

  遺言は、内容を基本的に自由に作成できるため、法律上の相続人(法定相続人)を外して遺言が作成できますが、法律上の相続人は、 民法に規定されている遺留分という制度で一定限度保護されることになるのです。

  遺留分制度というのは、大まかに言えば、一定範囲の法定相続人については一定割合の範囲で相続財産を引き継ぐことができるとする制度のことで、遺言の内容に関わらず、遺留分を認められている者は放棄をしない限りは相続財産を取得できます。

  遺留分が認められている相続人は、配偶者、子、直系尊属(つまり自分の親等)で、認められている割合は、直系尊属のみが相続人の場合には法定相続分の3分の1、その他の場合には法定相続分の2分の1とされています。

  したがって、例えば遺言をする人に子供が1人と妻がいて、全ての財産を妻に相続させるという内容の遺言をしたとしても、子供は妻に対して4分の1の割合で自分に相続財産を分けるよう請求できることとなります。

  遺留分を考慮せずに遺言をした場合には、後々遺留分を巡って相続人の間で紛争が生じることもありますので、この点については十分に注意をして、遺留分の放棄を検討したり、遺留分に配慮をした遺言の内容にしておく等の配慮が必要になります。

  公正証書遺言を作成する場合にも、弁護士は、その具体的内容を調査、検討します。具体的には、遺言をされる方の希望を最大限尊重しながら、相続財産の現状や、これまでの法定相続人との関係等から遺言内容を作成します。予想されるトラブルがある場合にも、これを回避する方策について、アドバイスを行います。

  また、相続が開始した場合には、遺言を具体的に執行する人(例えば、不動産の名義を遺言で取得する人に変更する、預貯金を遺言に従って分配する等。遺言執行者といいます)が必要となりますが、遺言執行者を誰にするかも遺言で決めることができます。

  中立、公平な立場から、また遺言者の意思を尊重して具体的な遺産分割がなされるように、弁護士を遺言執行者に指名することもあります。作成に関与した弁護士を遺言執行者にすることもできます。関心がある方は、お気楽にご相談ください。