内縁関係は、法的には婚姻に準ずる関係とされ実質的に夫婦と同様の保護を受けられます。

  私は内縁の夫Xと20年来にわたり、X所有の建物で同居して来ましたが、Xが交通事故で亡くなりました。Xの相続人から建物の明渡請求を受けましたが、私に居住権は認められないのでしょうか。またX死亡による損害賠償請求権は認められますか?

  内縁について、法律上、正面から取り上げた規定は見あたりませんが、裁判例では、内縁は婚姻に準ずる関係とされています。

  従って、単なる同棲や愛人関係とは違い、諸々の理由から戸籍の届出をしていないだけで、実質的には夫婦と同じですから然るべき保護が受けられることになっています。

内縁関係といえるかどうかは、①お互いに婚姻の意思を持っているか、②夫婦としての共同生活の実体があるか等を考慮して判断されます。

  しかし、法律上の夫婦と違い、夫婦の姓が異なることのほか、内縁の相手方に対する相続権がないなど大きな差異があります(なお、以前は、婚外子の相続分については、嫡出子の2分の1とされていましたが、平成25年に最高裁違憲判決が出て、法改正もされ、現在、差異はありません。

  さて、設問の建物明渡の件ですが、あなたには内縁の妻として相続権が認められていませんので、建物の所有権は相続人が取得することとなります。

  しかしながら、裁判例では内縁の妻の家屋居住権は夫の相続人に対抗できるとされていますので、相続人に対して家屋を明け渡すことを拒むことができます。

  従って、相続人と協議のうえで、建物について使用借権若しくは賃借権を設定することとなるでしよう。

  次に内縁の夫死亡による損害賠償の件ですが、裁判例では、内縁の妻にも固有の損害賠償請求権が認められています。
賠償の対象としては、事故により内縁の夫を失ったことによる慰謝料請求権のほか、夫が生きていれば、今後将来にわたって夫が負担していたはずの生活費の補償等も含まれます。

  また、交通事故について労災認定が出れば、内縁の妻として遺族補償給付も受けられます。 ただ、X本人の固有の慰謝料請求権や逸失利益などの損害賠償請求権は、相続の対象となり、相続人がこれを取得することとなり内縁の妻には認められません。

2020年7月更新