契約書は取引内容を明確にする他、その内容によって権利、義務関係が定められます。トラブルを未然に防ぐ意味でも契約書を交わすことはとても重要です。

  私は機械の販売会社に勤務していますが、今度、新規の取引先(メーカー)と長期にわたり商品の供給契約を結ぶことになりました。どのような点に注意すればよいでしょうか?

  日本では、強行法規といわれる当事者の合意でも法律の規定と異なる合意ができないものを等を除いては、当事者間で自由に取引の内容を決めることができ(契約自由の原則)、その合意は法律の規定に優先します。したがって、当事者間にその契約の内容にしたがった権利義務が発生することになります。

  そして、契約書は契約内容を明確にし、紛争を予防する機能を果たすだけでなく、紛争が発生したときにも重要な証拠となります。しかも、一旦交わした契約は一方的に内容を変更することはできません。契約書は、自分にどのような権利義務が生じるのかを十分検討したうえ作成する必要があります。

  契約内容を明確にしておかなかったことにより生じるトラブルにはどのようなものがありますか?

  例えば、継続的に商品等を取り引きする場合、契約期間(いつからいつまでを取引期間とするのか)や更新について何も取り決めをしていなければ、相手方の都合で一方的に取引を中止されるおそれがあります。このような場合、営業計画が崩れたり、また取引を前提として設備投資や材料購入等をしていれば大きな損失を被ることになります。

  したがって、契約書では契約期間を明確にし、さらに更新の条件(例えば契約期間満了の2ヶ月前に双方が解約を申し出なければ当然に同じ条件で契約が更新されることとする等)等契約期間を明確に規定しておけば、後日の無用なトラブルを防ぐことができます。

  商品の所有権の移転時期についても契約で決まるのですか?

  はい。所有権がいつ移転するかについては、例えば取引先が代金未払のまま破産したが、商品はまだ倉庫にあるような場合に、自己の所有する商品であるからという理由で返還を求めることができるかどうか等の問題とも関連します。この場合、代金が未払であるからといって、当然にまだ所有権が売主にあるというわけではありません。所有権の移転時期は契約で決めることができ、例えば「所有権は代金支払時に売主から買主に移転するものとする」等の契約を締結しておけば、その規定に従い、商品の返還を請求することも可能となります。

  市販の契約書を使って契約をしようと思うのですが何か問題はありますか?

  市販の契約書にも必要事項は記載してあるようですが、当然内容はあくまでも一般的なものとなっています。契約書は作成すること自体が重要ではなく、その内容が最も重要ですから、取引の実態と相違していないか、自分の権利を守るために必要な特約を締結する必要がないか等十分チェックする必要があります。また、契約の内容は最悪の事態をも想定して規定した内容にする必要があり、そのような視点からも契約書をチェックする必要があります。