相続人で話し合いをして、遺言書の内容と異なる遺産分割をすることは可能です。2通以上の内容の矛盾する遺言書が存する場合、その優先関係は遺言者の死を基準として作成日が近い方が優先します。

  先日、父が亡くなりました。父は公正証書遺言を遺しており、母は既に亡く、相続人は私と妹の2人だけなのですが、遺言書の内容が妹に不利なため、遺言書どおりに分割することに妹は反発しています。穏便に解決したいのですが。

  遺言は、遺言者の遺産をどのように処分すべきかについて決定する遺言者の最終的な意思ですから、遺言どおりに分割すべきですし、妹さんの遺留分(法定相続人に保障される最低限度の持分)を侵害してさえいなければ、法的には妹さんの意思を無視して遺言どおりに遺産分割を実現することもできます。
  ただ、相続人全員の合意さえあれば、遺言内容と異なる分割協議をすることも可能です。従って、あなたが譲歩するのであれば妹さんの希望を容れて、遺言書の内容と異なった分割協議も可能となるのです。

  先の遺言書とは別の、作成日付の新しい遺言書が発見されました。これは自筆証書遺言で法律的にも有効とのことです。しかし、困ったことに遺言内容は前の遺言とは全く異なり矛盾しているのです。相続はどうなるのでしょうか?

  一度行った遺言の全部または一部を、本人の意思で取り消すことはもちろん可能です。設問のように前に行った遺言書に抵触する内容の遺言書を作れば、前の遺言は取り消されたことになります。
   もっとも、法律上有効な遺言書が2通存在したとしても、遺言書の内容が両立しうるものであれば各遺言書の内容において矛盾抵触はなく、各遺言書は全てそのとおり効力が発生することとなります。

  しかし、設問のように遺言書の内容が矛盾抵触している場合は、新しいものほど遺言者の最終的な意思と評価して、その事項については新しい遺言書の方が優先することと解されています。すなわちその範囲では前の遺言書は効力が生じないこととなるのです。このことは、遺言書が何通存在したとしても同様で、新しいものほど優先することになるのです