弁護士中山の「私の一冊」

傑作長編時代小説です (2018.9.12)

葉室麟 「散り椿」 角川文庫

この作品、折しも岡田准一さん主役で映画化されもうすぐ公開ですね。 
作者の葉室さんは1951年小倉生まれ。福岡は久留米の明善高校,西南学院大学文学部フランス語専攻卒業後は、地方紙の新聞記者、KBCラジオのニュースデスクを経て、2005年54歳で江戸時代元禄期の絵師尾形光琳,陶工尾形乾山(けんざん)兄弟のことを書いた「乾山晩愁」で作家デビューです。同作品でいきなり歴史文学賞を受賞されました。2007年に発表した「銀漢の賦」で松本清張賞を受賞、2012年「蜩ノ記」で直木賞受賞。さらに2016年には「鬼神のごとく 黒田謀反臣伝」で司馬遼太郎賞を受賞しました。晩年は京都に仕事場を構え福岡との間を行き来されていましたが、その京都で書かれた「古都再見」というエッセイでは、「死ぬのは怖くない」と語り、自らの最後を予期している節がありました。ほどなく昨年2017年12月病死されています。66歳でした。葉室さんはかなり書き溜めておられたのでしょうか。死後の現在も新刊が出ています。ちなみに作家生活12年間で70冊もの作品を遺されています。

 

さて「散り椿」です。 時は江戸時代、扇野藩を妻「篠」とともに18年前に出奔し、京都の地蔵院という古刹に身を寄せていたもと「勘定方」瓜生新兵衛。二人に子はなく出奔以来、新兵衛は病弱の篠を抱えて日々つましく暮らしていました。
病に伏していた篠は、庭に一輪、一輪、そしてまた一輪散る椿、散り椿を眺めながら、もう一度故郷(くに)の散り椿が見たいと願っていました。ある日、死を予期した篠は新兵衛に対し、自分が死んだら故郷に帰って、実家の庭の散り椿を自分の代わりに見て欲しい、そしてさらに新兵衛に成し遂げて欲しいあること告げるのでした。
篠は死に、悲しみに暮れる新兵衛は、篠の最後の願いを遂げるべく扇野藩へ帰藩します。もちろん藩に新兵衛の居所はなく、やむを得ず、篠の実家に身を寄せようとします。そこで篠の面影をそのまま有する妹里美と対面します。
出奔する前の新兵衛は、扇野藩では一刀流道場の四天王の一人としてその腕は聞こえていました。当時、新兵衛は勘定方として理を通して藩の不祥事を追求し、その主張が通らずに逆に藩を負われることになったのでした。藩では事件の巻き添えとなり謀殺されたものもあり、逆に昇進したものもいました。その昇進した者の中には新兵衛の親友であり新兵衛と同じ四天王の一人と呼ばれていた榊原采女もおり、今や出世頭として藩の重役を務めていたのでした。実は、新兵衛の妻篠はもともと榊原采女に嫁ぐこととなっていたのが破談となり、そのことを知らない新兵衛と一緒になったという経緯があったのでした。

 

新兵衛は当時の謀殺事件の犯人が誰なのか、ひいては不祥事の真相を突き止めるべく奔走しますが、過去の騒動を起こした張本人と目されていた新兵衛の帰郷により藩内では再び紛争が巻き起こり、ついには元親友であった榊原采女とも対決せざるを得ない状況へと追い込まれていきます。
過去の謀殺事件の犯人、不祥事の真相は明らかになるのか、はたまた篠が遺した言葉とは、その真意とは何だったのかと、全ての謎が解き明かされたとき…といった感じでストーリーは展開していきますがいかがでしょうか。

 

もちろん、ラストは感動と涙なしでは本を閉じることはできないこと必定です。さて、映画は読んでから見るか、見立てから読むか、たぶんどちらでもよいと思います。文庫本で272頁、734円です(了)。

過去のコラム

(99)  傑作長編時代小説です
「葉室麟 散り椿 角川文庫」 (2018.9.12)

(98)  あなただったら、不治の病とどう向き合いますか?
「二宮敦人 最後の医者は雨上がりの空に君を願う上下巻 Toブックス」 (2018.8.9)

(97)  フォーサイスの真実とは?
「フレデリック・フォーサイス アウトサイダー 陰謀の中の人生 角川書店」 (2018.6.25)

(96)  ジャパニーズウィスキーの発祥って?
「伊集院静 琥珀の夢 小説鳥井信治郎 上・下巻 集英社」 (2018.5.23)

(95)  宮澤賢治のイメージが変わるかもしれません。
「門井慶喜 銀河鉄道の父 講談社」 (2018.2.16)

(94)  ズバリ!! 明治維新の立役者西郷吉之助です。
「林真理子 西郷(せご)どん 角川書店」 (2018.1.15)

(93)  フィンセント・ファン・ゴッホの真実とは
「原田マハ たゆたえども沈まず 幻冬舎」 (2017.12.11)

(92)  ノーベル文学賞作家の作品を読んでみませんか。
「カズオ・イシグロ 私を離さないで ハヤカワ文庫」 (2017.11.28)

(91)  死神って本当は天使だったの?
「知念実希人 優しい死神の飼い方 光文社文庫」 (2017.10.16)

(90)  メンタルなことで仕事が行き詰っていませんか
「北川恵海 ちょっと今から仕事やめてくる メディアワークス文庫」 (2017.9.11)

(89)  池井戸ファンにおススメの一冊です。
「池井戸潤 アキラとあきら 徳間文庫」 (2017.8.22)

(88)  生まれ変わりを信じますか。
「佐藤正午さんの 月の満ち欠け 岩波書店」 (2017.7.12)

(87)  アル・カポネ,ジョン・デリンジャーといえば?
「スティーヴン・ハンター Gマン 宿命の銃弾(上・下) 扶桑社ミステリー」 (2017.6.20)

(86)  もしも過去の事実を改変できるとしたら
「梶尾真治 クロノス・ジョウンターの伝説 徳間文庫」 (2017.5.16)

(85)  もしも人間の知能を人工的に高めることができるとしたら
「ダニエル・キイス アルジャーノンに花束を ハヤカワ文庫」 (2017.4.11)

(84)  NHKさん、シュンスケを大河ドラマの主役にしてください
「門井慶喜 シュンスケ 角川文庫」 (2017.3.30)

(83)  純な気持ちでお読みください。
「住野よる 君の膵臓を食べたい 双葉社」 (2017.1.20)

(番外編)  司法修習生はどんな本を読んでいるのか
「伊坂幸太郎 サブマリン 講談社」 (2016.12.16)

(82)  ピカソのキュビズムって何?
「原田マハ 暗幕のゲルニカ 新潮社」 (2016.11.21)

(81)  家康は僻地江戸をどのように建設したのでしょうか
「門井慶喜(かどい よしのぶ) 家康、江戸を建てる 祥伝社」 (2016.10.13)

(80)  ランニングシューズ業界を覗いてみましょう
「池井戸潤 陸王 集英社」 (2016.9.9)

(79)  ピアノの調律師って?
「宮下奈都 羊と鋼の森 文藝春秋」 (2016.6.17)

(78)  人はなぜ山に登るのか
「夢枕獏 神々の山嶺(いただき) 上下巻、集英社文庫」 (2016.5.31)

(77)  ガラ携って何?
「相場英雄 ガラパゴス上・下巻 小学館」 (2016.4.11)

(76)  尖閣問題について考えてみましょう。
「青木俊 尖閣ゲーム 幻冬舎」 (2016.3.25)

(75)  宗教にはまったことはありますか。
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(74)  中国にもつい100年前まで皇帝がいました。
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(73)  「仁義なき戦い」の菅原文太はかっこよかった。
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(72)  どうして山に登るのか
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(71)  お互い愛情もない夫婦、そんな中、相手を突然亡くしたら・・・
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(70)  復讐とは虚しいものですね
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(69)  人魚姫ならぬ金魚姫はいかがですか
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(68)  突然、あなたの秘密が本で暴かれたら?
「ルネ・ナイト 夏の沈黙 東京創元社」 (2015.8.17)

(67)  ダビィンチには謎がいっぱい
「真保裕一 レオナルドの扉 角川書店」 (2015.8.10)

(66)  戦後の台湾をもっと知ってみたい
「東山彰良 流(りゅう) 講談社」 (2015.8.4)

(65)  産業スパイって本当にいるんですよね。
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(64)  ライオンさん、一度でも帰国していれば・・・
「さだまさし 風に立つライオン 幻冬舎文庫」 (2015.4.15)

(63)  それでも3億円が当たってみたい。
「川村元気 億男 マガジンハウス」 (2015.4.7)

(62)  神の子は知能が優れているのでしょうか。
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(61)  米軍史上最強の狙撃手の自伝です
「クリス・カイル アメリカン・スナイパー ハヤカワ文庫」 (2015.3.10)

(60)  戦隊ヒーローに憧れませんでしたか
「阿部和重・伊坂幸太郎合作 キャプテン・サンダーボルト 文藝春秋」 (2015.3.3)

(59)  裁判員裁判について勉強しよう。
「法坂一広 最終陳述 宝島社」 (2015.2.17)

(58)  死を目前にした男の生きざまとは
「殉愛 百田尚樹 幻冬舎」 (2014.11.27)

(57)  裁判官って普通の人と違うんですか
「黒木亮 法服の王国・小説裁判官(上)(下) 産経新聞出版」 (2014.10.29)

(56) 植物状態から生還したらどうなる?
「真保裕一 奇跡の人 新潮社文庫」 (2013.12.25)

(55) 時をかける手紙
「東野圭吾 ナミヤ雑貨店の奇蹟 角川書店」 (2013.12.11)

(54) 人類の世紀末を想像できますか
「極北 マーセル・セロー  中央公論新社」 (2013.12.2)

(53) パンデミックをご存じですか?
「生存者ゼロ 安生正 宝島社」 (2013.11.21)

(52) 海外で亡くなった人はどのようにして帰国するのでしょうか
「エンジェルフライト 国際霊柩送還士 佐々涼子 集英社」 (2013.11.13)

(51) 倍返しと土下座で著名な半沢直樹の続編です。
「ロスジェネの逆襲 池井戸潤 ダイヤモンド社」 (2013.11.1)

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