弁護士中山の「私の一冊」

ジャパニーズウィスキーの発祥って? (2018.5.23)

伊集院静 「琥珀の夢 小説鳥井信治郎」 上・下巻 集英社

鳥井信治郎さんをご存知ですか。サントリーの創業者ですね。
サントリーという会社名はサントリーのあの赤玉ポートワインに由来します。赤玉は太陽のSUNから来ていますが、これに鳥井さんの姓を合体させてサン+トリイです。

まずはウィスキーのお話をさせていただきます。
ウィスキーといえばスコットランド発祥のスコッチウィスキーがはじめとされ12,3世紀ころ発祥です。今では世界5大ウィスキーとして、スコッチウィスキーに加えて、お隣りアイルランドのアイリッシュウィスキー、アメリカのバーボンウィスキーにカナディアンウィスキー、そしてジャパニーズウィスキーが挙げられます。明治初め頃は、ウィスキーといえばスコッチというくらいウィスキーの代名詞とされていました。

お酒は、食事を基準に分けてみると食前酒、食中酒、食後酒があります。 食前酒は例えば葡萄の皮を醸造して作られたシェリー酒ですね。
食中酒はビール、シャンパン、ワインですね。日本ではこれらに加え日本酒、焼酎があります。
そして食後酒とされているのがスコッチ、ブランデーです。わが日本でもウィスキーはもっぱら一次会の食後に二次会のバーやスナックで飲まれていましたよね。ちなみにヨーロッパのジェントルメンは食後はダイニングからリビングに部屋を移して男同士でスコッチをやりながら政治を語っていたのでした。

ウィスキーにはモルトウィスキーといって原料としては単一の大麦だけで作られるものと、単一の穀物を原料として作られるグレーンウィスキーとがあり、この二つをブレンドしたものがブレンデットウィスキーといいます。あの有名なオールドパーやジョニーウォーカーはブレンデッドウィスキーの代表格ですが、なんと数十種類のモルトとグレーンの混ぜ合わせのレシピがあります。どうしてブレンドされるようになったのかといいますと、シングルモルトだとその年の作物の出来栄えによって、樽仕込みが出来ない年が出てきます。そうすると好みのモルトウィスキーができない年が出てきて、供給が追い付かないことになりかねません。ブレンドすることにより安定的なウィスキーの供給を目指したのでした。ブランデーが作られることとなったきっかけもこれと同じ理由だそうです。つまりスコッチが飲めないことに備えてブランデーが考案されたということです。

ウィスキーもワインと同じように古いものが喜ばれます。例えばスコッチの王様といわれるフルーティーな香りのマッカランですが、世に出ているものは12年ものとか18年ものといわれますが、この年数は蒸留された後、シェリー酒を保存していた樽に詰め込まれ熟成保存された期間をいうのですが、本当に古いものは、例えばボトルに1959年とラベリングされて12年ものとされていたなら、1959年は瓶詰にされた年でその段階で12年間樽で貯蔵されていたということを意味しますから、1947年に樽詰めされたということです。これを今飲むなら72年前の酒を飲むということになります。こんなオールドウィスキーは今も超高級なバーには置いていて、ワンショット1万円もしたりします。
といった感じで話は尽きないののですが、作品紹介です。

まずは、あまりにも有名な伊集院静さんの略歴からご紹介からします。
1950年山口県防府市生まれ、野球少年として育ち、プロを目指してあのミスター長嶋さまの助言により野球をやるなら立教大学へと、進学しますが挫折、卒業後は広告代理店に入りCMディレクターとして活躍、後に彼の妻となった夏目雅子さんを発掘するとともに、ユーミン、松田聖子など数多くのコンサートディレクターを務めます。作詞も手掛け近藤真彦の「ギンギラギンにさりげなく」「愚か者」などを作詞します。

夏目さんとの結婚騒ぎの責任を取る形で会社を辞めて独立、文筆家として81年に作家デビューです。
92年「受け月」で直木賞、94年「機関車先生」で柴田錬三郎賞、01年「ころころ」で吉川英治文学賞を受賞されています。
交友関係も広く井上陽水さんや松井秀喜さんとの交流も深いようです。現在は妻の篠ひろ子さんとともに仙台に在住です。

さて作品です。本作品は、日本で初めての本格国産ウィスキー造りに命を捧げたといっても過言ではないサントリーの創業者鳥井信治郎さんの伝記小説です。
信治郎は1879年大阪市東区釣鐘町で小さな両替商を営む家の次男として生まれます。13歳にして薬種問屋の小西儀介商店へ丁稚として奉公に出て、ここで洋酒と出会います。修行の毎日、様々な経験を経て20歳で独立し鳥井商店を開業。日々葡萄酒の味の研究します。実際は、外国産の安いワインにアルコールや砂糖を調合して独自の味を出そうとしていたのです。ちなみにこの頃、日本では葡萄酒は今の養命酒のように滋養強壮の薬とされて売り込まれていました。その結果、完成したのがあの赤玉ポートワインです。

次は国産ウィスキーに乗り出します。ウイスキーの製造は原料を蒸留して樽に数年間寝かせて出荷という経路をたどるため商品化までに数年間を要します。だから莫大な費用をかけて設備投資してから現実に売り出すまでは、全く収入がないということになり、資金的に余裕がなければ手を出せない事業なのです。当時資金的に潤沢ではなかった鳥井商店でしたので、この試みは周囲から大反対にあっていました。が、いかにしてこれを乗り越えていったのでしょうか。
ウイスキーづくりでは、当時スコットランドからウイスキーの製造技術を身に着けて帰国した後のニッカの創始者であるマッサンこと竹鶴政孝さんも登場します。そして創意工夫の末、1919年ついにトリスウィスキーが発売されます。そして、1929年国産第1号の本格ウィスキー「サントリーウィスキー白札」が発売、さらにビール事業にも進出し、次第に現在のサントリーの礎を築いていきます。
1962年、83歳でついにその生涯を閉じるまでの間、彼の琥珀の夢はどこまで実現されたのでしょうか。   さあ日本のウィスキーの歴史を勉強してみましょう。

本作品は日経新聞に連載されていたのが単行本化されたものです。
元総理の小泉純一郎さんが本作品の単行本発刊にあたり、単行本の帯に「信治郎に惚れた! この夢と情熱が今の日本を作った。まさに感動の書だ。」と寄せ書きしています。まさにそのとおりと言いたい鳥井さんの生涯です。

集英社から2017年10月5日に発刊、単行本2冊合わせて約800頁、3456円です(了)。

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