弁護士中山の「私の一冊」

池井戸ファンにおススメの一冊です。 (2017.8.22)

池井戸潤 「アキラとあきら」 徳間文庫

本日ご紹介する「アキラとあきら」はあの「下町ロケット」で直木賞を受賞した池井戸さんお得意の経済もの,銀行小説です。池井戸さんの作品は,その多くがテレビや映画で映像化されています。本作品もご存知の方もいるかと思いますが,既にこの7月からWOWOWでテレビドラマ化されていて現在放映中で,佳境に入ったところです。もちろん私も観ていますが,主人公は同じあきらという名の二人で,これを演じるのはイケメン俳優の向井理(おさむ)と斉藤工(たくみ)です。原作はかなりの長編ですので,テレビシナリオ化に当たって,ストーリーが若干端折られて,一部変更されています。なので原作の方が断然面白いことは言うまでもありません。

さて,本作品は新刊であって新作ではありません。実は本作品は2006年から2009年にかけて「問題小説」という雑誌に連載されていたのですが,どういうわけか書籍化されないまま埋もれていたのです。これを今回オリジナル文庫として発刊したものです。ちなみにあの倍返しで有名な「半沢直樹シリーズ」が書かれたのが2004年から2008年にかけてで,本作品と同時期でした。「下町ロケット」の発表が2010年ですから,本作品はいずれにしろ系譜的にも池井戸さんの絶頂期に描かれた作品です。さらに今回,発刊にあたり現在の池井戸さんが,発表から10年の時を経て自ら全面的に加筆修正していますので傑作であることは間違いありません。どうかご堪能ください。

ストーリーです。 一人目の山崎あきらは伊豆の小さな町工場の経営者の長男として育ちます。もう一人の階堂あきらは大手海運会社階堂海運の社長の長男に生まれ,二人は同じ歳で将来は会社を継ぐ運命にありました。ところが,小さな町工場の方は経営危機に瀕し取引銀行から融資をストップされて倒産してしまい,山崎あきら少年家族は夜逃げ同然で故郷を去ります。そういう経緯から山崎あきらは銀行の社会的存在の意義に深く疑問を抱くようになっていました。 一方,階堂家の海運会社は順風満帆とはいえないまでも会社として成長していました。しかし、階堂あきらは長男として将来会社を継がなければならないという宿命に対して子どもながらに嫌悪感を抱いていました。そんな二人は小学生時代に一度だけ,ひょんなことから顔を合わせたことがありましたが,その後成長して奇遇にも同じ東大に進学し,交流はないものの卒業後,これまた奇しくも同じ大手銀行に同期就職しライバルとして競うこととなります。本作品は二人のあきらの人生のうち30年間を小学校を基点に描いている長編小説です。

銀行はどうやって儲けているかご存知ですか。今は銀行も多角経営化していますが,本来の銀行業務は日銀から低金利で借り受けたお金と一般市民から日銀よりも低金利で集めた預金を原資として,それより高い金利で事業者や個人などに貸し付けて利ザヤを得て稼いでいるのです。当然,貸付金額が多額となれはぜなるほど儲けは多くなる訳で,例えば,巨大プロジェクトになれば一度の貸付が数千億円に達することもままあります。この場合,金利が年1%だとしても1億で年100万円,1000億だと10億円になります。儲かるのは当たり前ですよね。
はい,そういうことで銀行の基本は,預金を集める営業とこれを貸し付ける融資担当なわけです。つまり回収不能の恐れのない事業者に多額のお金を貸し出すわけですが,優良かつ確実な事業者はむしろ少なくて,かなりのリスクを伴いつつも現実には回収不能を回避しながら多くの債務者に貸し出すことが銀行の利益にもつながるわけです。

二人のアキラは銀行の支店は違うけれどいずれも融資担当となります。融資担当として生の事業者と向き合い,融資を通じて企業育成を担っていることを自覚します。そうして銀行が単なる高金利目当ての金貸しに成り下がってはいけないことを肝に銘じます。そんな中,階堂あきらは銀行を辞め階堂家の当主として会社を継がざるを得ない状況となります。会社を継ぐことを忌避し銀行に就職したはずの階堂あきらはどうしてその選択をしなければならなかったのか,やがて山崎あきらは銀行融資担当者として階堂あきら率いる階堂海運を担当することとなります。

・・・という感じでストーリーは進んでいきます。はい,これ以上はネタばれになりますので止めておきます。

なお池井戸さんの略歴につきましては、私の一冊(29)をご参照ください。 最後に,近々あの半沢直樹が新刊として復活しますのでこちらも楽しみです。
本日ご紹介したのは,池井戸潤さんの「アキラとあきら」徳間文庫から,2017年5月17日徳間文庫から発刊720頁1080円です(了)。

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番外編
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