弁護士中山の「私の一冊」

もしも人間の知能を人工的に高めることができるとしたら (2017.4.11)

ダニエル・キイス「アルジャーノンに花束を」ハヤカワ文庫

今回は感動する作品を探してきました。

 

初作は1959年、中くらいの長さの小説として発表されましたが、その後、作者自身により長編として書き加えられて1966年に再出版されました。累計で350万部売り上げている超ロングセラーの不朽の名作です。

 

日本では長編小説版が1978年に出版され、2015年3月には新装版が出版され現在に至っています。
また、ご存知の方はご存知のとおり、本作品は1968年アメリカで、2000年カナダで、2006年にはフランスでそれぞれ映画化されています。日本では、2002年と2015年にそれぞれテレビドラマ化されています。また、ミュージカルにもなっています。

 

作者のダニエル・キイスは1927年にニューヨークのブルックリン生まれで、17歳の時に船員となり、その後ブルックリンカレッジで心理学の学士を取得します。職を転々としながら、高校の国語科教員となり定時制で英文学を学び、週末には小説を書いていました。1952年にはホラーやSFのコミックスの原作を手掛けていました。最終的には英文学の修士を取得して1966年からはオハイオ大学で英文学と創作の教授となり教員生活の傍ら作家活動をしていました。2000年に教員をリタイヤしてからはフロリダで作家生活に入り2014年に86歳で亡くなられています。本作品以外の著名なものとしては、解離性同一性障害や多重人格を扱った「5番目のサリー」とか「24人のビリー・ミリガン」などがあります。

 

本作品は作者がカレッジ時代に教室でメモしていた「もしも人間の知能を人工的に高めることができたら一体どういうことになるのか」ということをもとに、これと当時社会問題化していたいじめや虐待問題とを関連付けて構想したそうです。そして「知能」が人間に与えられた最高の資質であるにもかかわらず、その知識を求める心が愛情を求める心を排除してしまうことが多いことに気づき、このことを本作品のテーマに据えました。

 

主人公チャーリーは知的障害により幼児程度の知能しかありませんでした。他人を疑うことを知らず、周囲に笑顔を振りまき誰にでも親切であろうとする大きな体に小さな子どもの心を持った優しい性格の32歳の青年でした。IQは68しかありませんでした。現在、一般的にIQ診断は100が平均値とされており、68以下は異常値とされ、IQが50から70だと多くは軽度の知的障害があるものと診断されています。ちなみに136以上だと天才ですが数値的に高いという点において異常値とされています。ギネスブックに載っているIQの最高値は228です。

 

チャーリーはパン屋さんで単純労働をしながら、知的障碍者が通う学校に行っていました。
タイトルとなっているアルジャーノンは実験用の白いハツカネズミのなまえです。アルジャーノンの脳に対しては大学のグループによって手術が施され、この手術により驚くべく記憶・思考力を発揮しマウスとして極めて高い知能を有するようになっていました。
一方、チャーリーも大学のグループから様々な診察をされて、机上に特別の迷路を作ってその迷路をどちらが早く抜け出せるかどうかで、マウスのアルジャーノンと競う実験をさせられていました。結果はいつもマウスのアルジャーノンのの勝ちです。
そんなある日、チャーリーにアルジャーノンになされたのと同様の手術が持ち掛けられます。チャーリーは賢くなって、周りの人と友達になりたいとの一心で迷わず手術を受けることとします。人体実験としての第1号の手術は成功し、チャーリーのIQは数か月で68から185となりました。
チャーリーは頭がよくなるにつれ、これまで友達だと信じていた仕事仲間に実は騙されいじめられていたこと、自分の知能の低さから母親に捨てられたことなど、知りたくもない事実を知るようになります。また、急成長をした知能と幼いままの感情とのバランスが取れずに葛藤を抱きます。一方、初めての恋も経験します。
高知能を有するようになって劇的に変化した天才チャーリーの未来はどうなるのか、といった感じてストーリーは進んでいき、ラストを迎えますが、果たしてどうなるのでしょうか。感動のラストであることは間違いありません。

 

本作品のジャンルはSFとされていますが、これは科学的にあり得ない脳手術を前提としているため、その意味でのサイエンスフィクションということです。 なお、本作品がテレビドラマ化されていることをお話ししましたが、ドラマ化にあたって、かなり本編を変更していますのでまずは原作を読まれることをお勧めします。  ハヤカワ文庫から464頁、929円ですが、電子書籍のキンドル版だと820円です(了)。

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(51) 倍返しと土下座で著名な半沢直樹の続編です。
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