弁護士中山の「私の一冊」

ダビィンチには謎がいっぱい (2015.8.10)

真保裕一「レオナルドの扉」角川書店

 

作者の真保さんは既に「私の一冊23」でご紹介したとおり、もともとテレビアニメーションの制作者でして、笑うセールスマンやドラえもんの劇場版を何作か手がけています。その一方で小説を書かれており91年に「連鎖」というチェルノブイリ原発の汚染食品を扱ったミステリーで江戸川乱歩賞を受賞して作家としてデビューしました。その後、95年には織田裕二と松嶋菜々子で映画化された「ホワイトアウト」で吉川英治文学新人賞を受賞、96年には偽札作りのミステリー「奪取」で山本周五郎賞、2006年には登山小説「灰色の北壁」で新田次郎文学賞を受賞しています。最近では外交官織田裕二を主役としたアマルフィーシリーズなど、次々とヒット作を飛ばしている流行作家のひとりです。

ところで、作家って意外に儲からないらしいのですが、ご存知でしたか。

ついこないだ,芥川賞作家の柳美里さんが「貧乏の神様」という本を書いて内情を暴露していますが、それによれば原稿料と印税で優雅な生活ができるのは、作家の世界でもほんの一握りで二ケタの人しかいないそうです。

真保さんはもちろん原稿料と印税でかなりの収入を得ている数少ないブルジョア作家のひとりです。

本作品は、真保さんによれば、構想から30年、構想当時はアニメの仕事をしていて、その原作の題材として考えていたそうです。タイトルのレオナルドは、あのイタリア、フィレンツェの巨匠レオナルド・ダビィンチのことです。彼は1452年にフィレンツェのビィンチ村に生まれ、1519年にフランス王のフランソワ1世の庇護を受けていたアンボアーズ城の別邸にて67年の生涯を閉じています。

巨匠ダビィンチは「モナ・リザ」や「最後の晩餐」など絵画の世界で超一流の力を発揮していますが、それだけではなく、数学や天文学、医学、土木に軍事技術など様々な分野で天才ぶりをいかんなく発揮しています。彼は万能人と呼ばれ、その時代にすでに人体の解剖図やヘリコプター、飛行船や戦車などの設計図を作成したり、その成果をノートに遺していましたが、どういうわけかその多くは世間に公表していませんでした。

そのマル秘だったノートは、没後になって5000頁近くが見つかっており、現在も研究が続けられています。しかし、惜しまれることに1万頁くらいが紛失したとの話もあり、これらは、もしかしたら今もどこかの古い図書館や教会の倉庫に眠っているのかもしれません。

史実として、フランス革命後にイタリアに進軍した皇帝ナポレオン・ボナパルドは、どういう目的からか、当時レオナルドが300年前に遺したノートの一部をミラノの図書館から持ち去っています。これらの事実は、いろんな想像をかきたて本作品執筆のきっかけとなったそうです。

ということでストーリーですが、時は19世紀のヨーロッパ、フランス革命下のイタリア、主人公のジャン16歳は祖父とともに流れ着いた小さな田舎の村に暮らしていました。祖父とふたり、時計職人として時計だけでなく村のあらゆる器械の修理を引き受ける働き者でした。ジャンは手先が器用だけでなくアイデア豊かで、暇を見つけては、村長の息子ピッコロとともに彼らの秘密基地で、自ら設計した空を飛べる翼の制作に取り組んでいました。

そしていつか、レオナルド・ダビィンチが書いた翼のスケッチや設計図を、ミラノの古い図書館に見に行くことを夢見ていました。そんなある日、ナポレオンのフランス軍の兵士が、力づくでジャンの父の消息を尋ねてやってきます。ジャンの父コラードはジャンが幼いころ、ジャンには知らされていない理由で失踪していたのでした。

ジャンの一族は、実は、あのレオナルド・ダビィンチと同じビィンチ村の出身だったのです。

どうやらフランス軍はナポレオンの命を受けてレオナルドの失われた秘密のノートを探していたのです。そして、ジャンの父コラード失踪の理由はこの秘密のノートと関係していたのでした。

どうしてナポレオンはレオナルドの秘密のノートを手に入れようとしているのか。一方、ヴァチカンの手先とみられる謎の女も秘密のノート争奪戦に加わります。果たして、レオナルドの秘密のノートは存在するのか、それはどこにあり、何が書かれているのか。そのノートを手に入れたものは神にも悪魔にもなれる、という「夢と冒険の物語」です。

仮に映像化されたらと思うと、場面場面がワクワクしてきます。

あとがきまで入れて397頁の書下ろし。童心に帰って楽しんでください(了)。

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