弁護士中山の「私の一冊」

植物状態から生還したらどうなる? (2013.12.25)

「奇跡の人」 真保裕一 新潮社文庫

 

  事故か何かで記憶喪失になった経験のある人のことを聞いたことありませんか?
  私も三日だけ経験したことがありますが,記憶が空白になってしまって,多くの場合その空白の記憶は蘇らないようです。
  泥酔して,都合の悪いことは覚えてないってことは皆さん頻繁に経験したことおありだとは思います。

  ロバートデニーロの主演映画「レナードの朝」を観られましたか。

  病気でずっと眠り続けていた主人公が,ある日突然目を覚ましてみたらというのでしたが,いわゆる事実上の植物状態から回復した人の記憶というのはどうなるんでしょうか。

  本作品はそんな疑問に一例として答えます。

  物語は冒頭,死を目前にした母が息子克己に宛てて残した16冊の手記からはじまります。母の息子克己の闘病記録でした。
  主人公相馬克己,彼は22歳の時,交通事故により激しく頭部を打ち意識不明の重体になります。そして,一度は脳死の判定をされかけながらも奇跡的に命を取り留め,いわゆる植物状態になります。
  その後再び奇跡は起こり,克己は意識を回復し,ついには1人で歩けるようにまでになります。このことから克己は周囲から「奇跡の人」といわれます。
  このとき事故から既に8年が経とうとしていました。宮崎の病院にて長期の入院生活をしている克己は既に30歳。何よりも彼の快復を願い献身的に看病してきた母は,既にガンで他界していたのでした。肉体的に回復した克己は天涯孤独の身となってしまったのでした。
  ところで,彼には事故前の記憶が全くないのです。意識が回復して以来,知的に幼児返りしていた彼は,小学校の勉強からはじめて今は中学1年生の教科書で勉強しています。
  精神的にも日々成長する克己,そんな彼に退院許可が出ます。退院した彼は宮崎市内の母が残した自宅に帰ります。
  自宅は新興住宅地にありました。もちろん,そこが彼にとっての生まれ育った場所ではないことはいうまでもありません。母はいつからそこで暮らしていたのかもわかりません。
  ここから彼の昔探しの旅がはじまります。
  まず,彼は自分の住民票から宮崎に転居してくる前の住所地が福岡であることを知ります。
  休みを利用して福岡を訪ねますが,そこも彼とは無関係の場所でした。

  事故を起こす前,彼はどこでどんな生活をしていたのか?
  当時を知るものはいるのか?
  彼が起こした事故とはどのようなものであったのか?

  次第に事実は明らかになり,核心へと近づいていきます。
  彼は一体何者だったのか?
  すべての真実が明らかになったとき彼は一体どうなってしまうのか?

  感動のラストです
  ・・・という感じですがいかがでしょうか。

  著者真保さんの数ある作品の中で本作品は絶品であると思い,ちょっと古い作品ですが,ご紹介することとしました。
  著者の略歴につきましては,私の一冊23をご参照ください(了)。

過去のコラム

(91)  死神って本当は天使だったの?
「知念実希人 優しい死神の飼い方 光文社文庫」 (2017.10.16)

(90)  メンタルなことで仕事が行き詰っていませんか
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(89)  池井戸ファンにおススメの一冊です。
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(88)  生まれ変わりを信じますか。
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(87)  アル・カポネ,ジョン・デリンジャーといえば?
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(86)  もしも過去の事実を改変できるとしたら
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(85)  もしも人間の知能を人工的に高めることができるとしたら
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(84)  NHKさん、シュンスケを大河ドラマの主役にしてください
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(83)  純な気持ちでお読みください。
「住野よる 君の膵臓を食べたい 双葉社」 (2017.1.20)

(番外編)  司法修習生はどんな本を読んでいるのか
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(82)  ピカソのキュビズムって何?
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(81)  家康は僻地江戸をどのように建設したのでしょうか
「門井慶喜(かどい よしのぶ) 家康、江戸を建てる 祥伝社」 (2016.10.13)

(80)  ランニングシューズ業界を覗いてみましょう
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(79)  ピアノの調律師って?
「宮下奈都 羊と鋼の森 文藝春秋」 (2016.6.17)

(78)  人はなぜ山に登るのか
「夢枕獏 神々の山嶺(いただき) 上下巻、集英社文庫」 (2016.5.31)

(77)  ガラ携って何?
「相場英雄 ガラパゴス上・下巻 小学館」 (2016.4.11)

(76)  尖閣問題について考えてみましょう。
「青木俊 尖閣ゲーム 幻冬舎」 (2016.3.25)

(75)  宗教にはまったことはありますか。
「中村文則 教団X 集英社」 (2016.3.11)

(74)  中国にもつい100年前まで皇帝がいました。
「浅田次郎 蒼穹の昴 講談社」 (2016.1.26)

(73)  「仁義なき戦い」の菅原文太はかっこよかった。
「柚月裕子 孤狼の血 角川書店」 (2015.12.3)

(72)  どうして山に登るのか
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(71)  お互い愛情もない夫婦、そんな中、相手を突然亡くしたら・・・
「西川美和 永い言い訳 文芸春秋」 (2015.11.9)

(70)  復讐とは虚しいものですね
「ピエール・ルメートル その女アレックス 文春文庫」 (2015.10.29)

(69)  人魚姫ならぬ金魚姫はいかがですか
「萩原浩(おぎわら ひろし) 金魚姫 角川書店」 (2015.10.15)

(68)  突然、あなたの秘密が本で暴かれたら?
「ルネ・ナイト 夏の沈黙 東京創元社」 (2015.8.17)

(67)  ダビィンチには謎がいっぱい
「真保裕一 レオナルドの扉 角川書店」 (2015.8.10)

(66)  戦後の台湾をもっと知ってみたい
「東山彰良 流(りゅう) 講談社」 (2015.8.4)

(65)  産業スパイって本当にいるんですよね。
「吉田修一 森は知っている 幻冬舎」 (2015.6.3)

(64)  ライオンさん、一度でも帰国していれば・・・
「さだまさし 風に立つライオン 幻冬舎文庫」 (2015.4.15)

(63)  それでも3億円が当たってみたい。
「川村元気 億男 マガジンハウス」 (2015.4.7)

(62)  神の子は知能が優れているのでしょうか。
「薬丸岳 神の子 上・下巻 光文社」 (2015.3.25)

(61)  米軍史上最強の狙撃手の自伝です
「クリス・カイル アメリカン・スナイパー ハヤカワ文庫」 (2015.3.10)

(60)  戦隊ヒーローに憧れませんでしたか
「阿部和重・伊坂幸太郎合作 キャプテン・サンダーボルト 文藝春秋」 (2015.3.3)

(59)  裁判員裁判について勉強しよう。
「法坂一広 最終陳述 宝島社」 (2015.2.17)

(58)  死を目前にした男の生きざまとは
「殉愛 百田尚樹 幻冬舎」 (2014.11.27)

(57)  裁判官って普通の人と違うんですか
「黒木亮 法服の王国・小説裁判官(上)(下) 産経新聞出版」 (2014.10.29)

(56) 植物状態から生還したらどうなる?
「真保裕一 奇跡の人 新潮社文庫」 (2013.12.25)

(55) 時をかける手紙
「東野圭吾 ナミヤ雑貨店の奇蹟 角川書店」 (2013.12.11)

(54) 人類の世紀末を想像できますか
「極北 マーセル・セロー  中央公論新社」 (2013.12.2)

(53) パンデミックをご存じですか?
「生存者ゼロ 安生正 宝島社」 (2013.11.21)

(52) 海外で亡くなった人はどのようにして帰国するのでしょうか
「エンジェルフライト 国際霊柩送還士 佐々涼子 集英社」 (2013.11.13)

(51) 倍返しと土下座で著名な半沢直樹の続編です。
「ロスジェネの逆襲 池井戸潤 ダイヤモンド社」 (2013.11.1)

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番外編
スコットランドゴルフ紀行

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