弁護士中山の「私の一冊」

海外で亡くなった人はどのようにして帰国するのでしょうか (2013.11.13)

「エンジェルフライト 国際霊柩送還士」 佐々涼子 集英社

 

  今回は2012年の開高健ノンフィクション賞を受賞した作品です。

  我々はよく何気なしに海外旅行へ行きますが,万万が一不幸にも当地で事故や事件で亡くなった場合,日本にはどうやって帰ってくるのだと思われますか?

 

  まず現地において警察による検死や遺族による本人確認が行われます。その後様々な書類上の出国手続がとられるとともに,現地の葬儀関係者により,遺体にエンバーミングといって防腐処置等適切な処置をして,航空貨物便として帰ってくるのです。
  日本の空港に到着した遺体は,事件性があれば司法解剖に付された上で,国内の専門業者によりその遺体を修復し,顔にはファンデーションを塗り,可能な限り生前と同じ姿に戻して家族の元に帰るのです。
  逆に日本で外国人が亡くなった場合は,国内の専門の業者がエンバーミングするとともに,役所などで国内の専門の業者が手続を取り故国へ送り出すことになるのです。
  タイトルにもありますが,この一連の流れが国際霊柩送還と呼ばれています。この「国際霊柩送還」という言葉自体が登録商標になっているそうです。

  本書は国際霊柩送還の登録商標を有する専門会社エアハース・インターナショナルに密着取材したノンフィクション作品です。ちなみにこの会社エアハースは羽田空港のビル内にあります。

  さて,作者の佐々さんも冒頭の異国で日本人が亡くなった場合一体どうなってしまうのかという素朴な疑問がずっと気にかかっていて,折しもエアハースの存在を知ったんだそうです。それですぐに取材を申し込んだところ「あなたに遺族の気持ちがわかるのか」と強く拒絶されたのだそうです。それでも粘って粘って4年の歳月を経てやっと取材が実現したとのことです。
   病気であれ事故であれ,1年間に400から600名の方が海外で亡くなられておられます。このうちエアハースは半分以上に関わっており,エアハースの活動を見ることで,海外での多くの死とそれに向き合おうとする遺族の様々な姿,そこに関わる人間模様が明らかにされていきます。
  本書で取り上げられているのは,海外で転落死した20代の青年をはじめ,2011年のニュージーランド地震,クライストチャーチで犠牲になった人,近くは,2012年8月のシリア内戦を取材中に銃撃死したジャーナリスト山本美香さんであったりと,新聞に載るような重大事件,事故の裏には必ずと言っていいほどエアハースの働きがあっていたのです。
  人は死んだらどうやって故国へ帰るのか。どんな人がどんな思いで運んでいるのか。国境を越えた地で亡くなると家族はどんな思いを抱くのか。人間の死とは何か,愛する人の死という哀しみを乗り越え生き抜くためにはどうすればいいのか,弔いとは何なのかについて考えさせられる作品です。
  大人として知っておきたい知識として,さらっと流し読みでもいいので,読んでいただけたらという感じです(了)。

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