弁護士中山の「私の一冊」

倍返しと土下座で著名な半沢直樹の続編です。 (2013.11.1)

「ロスジェネの逆襲」 池井戸潤 ダイヤモンド社

 

  本作品はテレビドラマ化で高視聴率をたたき出した「半沢直樹」の原作「オレたちバブル入行組」「オレたち花のバブル組」に続く企業小説、バブルシリーズの第3弾です。主人公の半沢直樹がどれにも登場するわけです。先に前2作を読んでから読めば楽しみ倍増間違いなしです。
  作者の池井戸さんは「下町ロケット」(私の一冊29をご参照ください)で直木賞を受賞しています。

  ところで,ロスジェネって何のことか知っておられましたか?

  バブル景気といわれた時代がありましたが、世の中、浮かれていましたがあれはあれでいい時代だったんでしょうかねえ。バブル期は超好景気で就職戦線は華やかなものでした。それがバブル崩壊後は不景気という名のトンネルにすっぽりと入り,その期間は1994年から2004年までの10年間にも及びました。当然,この間は就職氷河期でもありました。この就職氷河期に社会人となった若者たち,その彼らのことを後に某新聞紙は「ロストジェネレーション」と書きたてました。略してロスジェネ世代と呼ぶそうです。

  さて、作品です。時はバブル崩壊後の2004年、大手東京中央銀行の営業部次長半沢は、何事にも筋を通す性格が災いして子会社の東京セントラル証券へ左遷させられてしまいます。ポストは営業企画部長です。折しも長引く証券不況の中、出向先の東京セントラルの業績も低迷していました。そんなある日,ビックビジネスが舞い込みます。大手IT会社「電脳雑伎集団」がライバル企業である「東京スパイラル」を敵対的買収したいというのです。買収額は1500億円にもなろうかという巨額な案件です。アドバイザーとしてこれを成功させれば巨額の手数料収入が入ることに加え、その実績により業界での地位を確固たるものにすることができます。早速、社内においてプロジェクトチームが編成され、集中的な検討が始まり2週間が経過します。
  ところが、電脳社との買収スキムを巡る打ち合わせ当日、電脳社の社長から「その件はもう結構です。こんなスピードではとてもパートナーとして信頼できません」。とアドバイザリー契約を解除されてしまうのです。唖然とする半沢。しかし、裏では何と東京セントラル証券の親会社である東京中央銀行の証券部により買収資金の融資との抱き合わせと圧倒的な人材、情報量を武器として、この買収案件を横取りされてしまったということが判明します。真実は東京セントラル証券の内部情報が、何者かにより親会社の東京中央銀行にリークされていたというのが原因していたのでした。しかし、半沢は「やられたら倍返しだ」と親会社と敵対することを決意します。つまり、買収する側から買収を仕掛けられている東京スパイラルに鞍替えして、電脳社からの敵対的買収を防御防衛するアドバイザーとしてついたのでした。さて法律の枠組みの中で許される範囲で奇抜かつ悪辣な手法で買収を仕掛ける電脳雑伎集団。半沢は電脳社のアドバイザーである東京中央銀行に対してどう挑むのか。迫真生がありドキドキしながらついつい物語に引き込まれてしまいます。それもそのはずです。下町ロケットの書評の際にも、ご紹介しましたが、池井戸さんはもと都市銀行に勤め、退職後は経営アドバイザーとして活躍されていました。ですからその知識は確かであり豊富です。M&Aの敵味方に分かれての攻撃・防御の数々は、プロの弁護士として法的観点からみても、確かなものであり「その通り」とうならせるものがあります。例によってラストの痛快さには、思わず手をたたきそうにすかっとします(了)。

過去のコラム

(90)  メンタルなことで仕事が行き詰っていませんか
「北川恵海 ちょっと今から仕事やめてくる メディアワークス文庫」 (2017.9.11)

(89)  池井戸ファンにおススメの一冊です。
「池井戸潤 アキラとあきら 徳間文庫」 (2017.8.22)

(88)  生まれ変わりを信じますか。
「佐藤正午さんの 月の満ち欠け 岩波書店」 (2017.7.12)

(87)  アル・カポネ,ジョン・デリンジャーといえば?
「スティーヴン・ハンター Gマン 宿命の銃弾(上・下) 扶桑社ミステリー」 (2017.6.20)

(86)  もしも過去の事実を改変できるとしたら
「梶尾真治 クロノス・ジョウンターの伝説 徳間文庫」 (2017.5.16)

(85)  もしも人間の知能を人工的に高めることができるとしたら
「ダニエル・キイス アルジャーノンに花束を ハヤカワ文庫」 (2017.4.11)

(84)  NHKさん、シュンスケを大河ドラマの主役にしてください
「門井慶喜 シュンスケ 角川文庫」 (2017.3.30)

(83)  純な気持ちでお読みください。
「住野よる 君の膵臓を食べたい 双葉社」 (2017.1.20)

(番外編)  司法修習生はどんな本を読んでいるのか
「伊坂幸太郎 サブマリン 講談社」 (2016.12.16)

(82)  ピカソのキュビズムって何?
「原田マハ 暗幕のゲルニカ 新潮社」 (2016.11.21)

(81)  家康は僻地江戸をどのように建設したのでしょうか
「門井慶喜(かどい よしのぶ) 家康、江戸を建てる 祥伝社」 (2016.10.13)

(80)  ランニングシューズ業界を覗いてみましょう
「池井戸潤 陸王 集英社」 (2016.9.9)

(79)  ピアノの調律師って?
「宮下奈都 羊と鋼の森 文藝春秋」 (2016.6.17)

(78)  人はなぜ山に登るのか
「夢枕獏 神々の山嶺(いただき) 上下巻、集英社文庫」 (2016.5.31)

(77)  ガラ携って何?
「相場英雄 ガラパゴス上・下巻 小学館」 (2016.4.11)

(76)  尖閣問題について考えてみましょう。
「青木俊 尖閣ゲーム 幻冬舎」 (2016.3.25)

(75)  宗教にはまったことはありますか。
「中村文則 教団X 集英社」 (2016.3.11)

(74)  中国にもつい100年前まで皇帝がいました。
「浅田次郎 蒼穹の昴 講談社」 (2016.1.26)

(73)  「仁義なき戦い」の菅原文太はかっこよかった。
「柚月裕子 孤狼の血 角川書店」 (2015.12.3)

(72)  どうして山に登るのか
「下村敦史 生還者 講談社」 (2015.12.3)

(71)  お互い愛情もない夫婦、そんな中、相手を突然亡くしたら・・・
「西川美和 永い言い訳 文芸春秋」 (2015.11.9)

(70)  復讐とは虚しいものですね
「ピエール・ルメートル その女アレックス 文春文庫」 (2015.10.29)

(69)  人魚姫ならぬ金魚姫はいかがですか
「萩原浩(おぎわら ひろし) 金魚姫 角川書店」 (2015.10.15)

(68)  突然、あなたの秘密が本で暴かれたら?
「ルネ・ナイト 夏の沈黙 東京創元社」 (2015.8.17)

(67)  ダビィンチには謎がいっぱい
「真保裕一 レオナルドの扉 角川書店」 (2015.8.10)

(66)  戦後の台湾をもっと知ってみたい
「東山彰良 流(りゅう) 講談社」 (2015.8.4)

(65)  産業スパイって本当にいるんですよね。
「吉田修一 森は知っている 幻冬舎」 (2015.6.3)

(64)  ライオンさん、一度でも帰国していれば・・・
「さだまさし 風に立つライオン 幻冬舎文庫」 (2015.4.15)

(63)  それでも3億円が当たってみたい。
「川村元気 億男 マガジンハウス」 (2015.4.7)

(62)  神の子は知能が優れているのでしょうか。
「薬丸岳 神の子 上・下巻 光文社」 (2015.3.25)

(61)  米軍史上最強の狙撃手の自伝です
「クリス・カイル アメリカン・スナイパー ハヤカワ文庫」 (2015.3.10)

(60)  戦隊ヒーローに憧れませんでしたか
「阿部和重・伊坂幸太郎合作 キャプテン・サンダーボルト 文藝春秋」 (2015.3.3)

(59)  裁判員裁判について勉強しよう。
「法坂一広 最終陳述 宝島社」 (2015.2.17)

(58)  死を目前にした男の生きざまとは
「殉愛 百田尚樹 幻冬舎」 (2014.11.27)

(57)  裁判官って普通の人と違うんですか
「黒木亮 法服の王国・小説裁判官(上)(下) 産経新聞出版」 (2014.10.29)

(56) 植物状態から生還したらどうなる?
「真保裕一 奇跡の人 新潮社文庫」 (2013.12.25)

(55) 時をかける手紙
「東野圭吾 ナミヤ雑貨店の奇蹟 角川書店」 (2013.12.11)

(54) 人類の世紀末を想像できますか
「極北 マーセル・セロー  中央公論新社」 (2013.12.2)

(53) パンデミックをご存じですか?
「生存者ゼロ 安生正 宝島社」 (2013.11.21)

(52) 海外で亡くなった人はどのようにして帰国するのでしょうか
「エンジェルフライト 国際霊柩送還士 佐々涼子 集英社」 (2013.11.13)

(51) 倍返しと土下座で著名な半沢直樹の続編です。
「ロスジェネの逆襲 池井戸潤 ダイヤモンド社」 (2013.11.1)

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