弁護士中山の「私の一冊」

豚肉スキデスカ? (2013.5.28)

「飼い喰い 三匹の豚とわたし」内澤旬子 岩波書店

 

  今日はタイトルのとおり豚さんのお話しです。

 

  ところで,本当のベジタリアンって,牛,豚,鶏を問わずお肉は食べないんですよね。
  本当に野菜ばかりで,食生活満足できるのでしょうか?
  ただ,有り難いお肉をいただく影には家畜たちの辛い現実があることを皆さんに知っていただきたいと思い本書を紹介することにしました。

 

  豚,牛,鶏は家畜として育てられていまるのはよくご存じだと思います。でも映画にもありましたが,豚はペットとして育ててもそれはそれで賢くて人に懐いたりしてとてもかわいいんだそうです。
  でも動物園に住んでいる動物やペットと違って,家畜である豚は天寿を全うすることはありません。食肉となる運命にあるからなんですが,皆さんは,豚が生まれて出荷されるまでにどのくらいの期間をおいているご存じですか?
  豚は生後約半年,ちなみに牛は約2年半で畜場に出荷され屠られ食肉となります。
  畜産農家が育てている豚の数は大規模なところで1万頭からの豚さんを飼育しているのです。

 

  本書は,作者が準備段階から約1年間かけて,生後間もない3匹の子豚を飼い育て,食肉に適すくらいに大きく太らせて畜場に出荷し,これを解体して食べるまでの実体験を綴ったドキュメンタリーです。ルポルタージュともいいますが。

 

  まずは内澤さんの顔写真が本書に付いてますのでどんな人か見てください。はい,えっ,うそっ,ほんとの世界です。
  このかた,3匹のかわいい子豚にそれぞれ伸ちゃん,夢ちゃん,秀ちゃんと名前まで付けてお育てになったんです。そして,克明な飼育日記をつけて,自らブログとして発信し,多種多様な得難い苦労をされて,この子たちを一生懸命太らせました。
  そして,子豚たちの最後のその日には「内澤旬子と3頭の豚」と銘打って3頭を食べる会を催したのでした。食べる会の会場のプロジェクターには3頭が生前に元気よく騒ぐ姿を大きく写しながら。献立は韓国料理,タイ料理,フランス料理とその道のプロに調理していただきました。3頭といえば盛りだくさんで,はい,当然完食です。

 

  豚さんの出荷時の体重は平均で110㎏を超えているそうです。ちなみにここまで育てるのに,えさはその3倍の330㎏は必要となるそうです。
  ところで110㎏の豚一頭からどれくらいの肉が取れるのでしょうか?
  一頭の豚は頭と足を落として皮を剥き,内臓を取られますが,この段階で約75㎏になります。ここから骨を取り除き余分な脂をそぐと54㎏,さらに筋や脂肪くず肉を取り除けば精肉となって約51㎏,さらにさらにここからスーパーに並ぶのは肩ロース4㎏,ロース9㎏,バラ9㎏,みんなの大好きなヒレ肉はたった1㎏の計23㎏だけなんです。残りの28㎏は挽肉やソーセージとなるのです(もちろん豚足,内臓はホルモンとして食べますよね)。
  こうして畜場で解体された段階で入札に賭けられるのですが,いくらで取引されると思われますか????はい。相場の変動はありますが一頭あたりたったの約2万円です。や,やすい。
  当然,作者の豚さん3頭で計6万ということになりますが,これまでに作者がかけたコストは10倍でも足りません,はい。経済的には全くペイしていません,ただこの本が売れれば別ですが。という感じでしたがいかがでしょうか。

 

  最後に作者の内澤さんは神奈川県出身のイラストルポライターです。日本はもちろん,世界各地を旅してその絵の巧さを活かしてイラスト入りのルポを書きます。45歳。このお歳で3回もの乳ガン手術を克服しておられ,その闘病記も「身体のいいなり」というタイトルで本にしています。

過去のコラム

(91)  死神って本当は天使だったの?
「知念実希人 優しい死神の飼い方 光文社文庫」 (2017.10.16)

(90)  メンタルなことで仕事が行き詰っていませんか
「北川恵海 ちょっと今から仕事やめてくる メディアワークス文庫」 (2017.9.11)

(89)  池井戸ファンにおススメの一冊です。
「池井戸潤 アキラとあきら 徳間文庫」 (2017.8.22)

(88)  生まれ変わりを信じますか。
「佐藤正午さんの 月の満ち欠け 岩波書店」 (2017.7.12)

(87)  アル・カポネ,ジョン・デリンジャーといえば?
「スティーヴン・ハンター Gマン 宿命の銃弾(上・下) 扶桑社ミステリー」 (2017.6.20)

(86)  もしも過去の事実を改変できるとしたら
「梶尾真治 クロノス・ジョウンターの伝説 徳間文庫」 (2017.5.16)

(85)  もしも人間の知能を人工的に高めることができるとしたら
「ダニエル・キイス アルジャーノンに花束を ハヤカワ文庫」 (2017.4.11)

(84)  NHKさん、シュンスケを大河ドラマの主役にしてください
「門井慶喜 シュンスケ 角川文庫」 (2017.3.30)

(83)  純な気持ちでお読みください。
「住野よる 君の膵臓を食べたい 双葉社」 (2017.1.20)

(番外編)  司法修習生はどんな本を読んでいるのか
「伊坂幸太郎 サブマリン 講談社」 (2016.12.16)

(82)  ピカソのキュビズムって何?
「原田マハ 暗幕のゲルニカ 新潮社」 (2016.11.21)

(81)  家康は僻地江戸をどのように建設したのでしょうか
「門井慶喜(かどい よしのぶ) 家康、江戸を建てる 祥伝社」 (2016.10.13)

(80)  ランニングシューズ業界を覗いてみましょう
「池井戸潤 陸王 集英社」 (2016.9.9)

(79)  ピアノの調律師って?
「宮下奈都 羊と鋼の森 文藝春秋」 (2016.6.17)

(78)  人はなぜ山に登るのか
「夢枕獏 神々の山嶺(いただき) 上下巻、集英社文庫」 (2016.5.31)

(77)  ガラ携って何?
「相場英雄 ガラパゴス上・下巻 小学館」 (2016.4.11)

(76)  尖閣問題について考えてみましょう。
「青木俊 尖閣ゲーム 幻冬舎」 (2016.3.25)

(75)  宗教にはまったことはありますか。
「中村文則 教団X 集英社」 (2016.3.11)

(74)  中国にもつい100年前まで皇帝がいました。
「浅田次郎 蒼穹の昴 講談社」 (2016.1.26)

(73)  「仁義なき戦い」の菅原文太はかっこよかった。
「柚月裕子 孤狼の血 角川書店」 (2015.12.3)

(72)  どうして山に登るのか
「下村敦史 生還者 講談社」 (2015.12.3)

(71)  お互い愛情もない夫婦、そんな中、相手を突然亡くしたら・・・
「西川美和 永い言い訳 文芸春秋」 (2015.11.9)

(70)  復讐とは虚しいものですね
「ピエール・ルメートル その女アレックス 文春文庫」 (2015.10.29)

(69)  人魚姫ならぬ金魚姫はいかがですか
「萩原浩(おぎわら ひろし) 金魚姫 角川書店」 (2015.10.15)

(68)  突然、あなたの秘密が本で暴かれたら?
「ルネ・ナイト 夏の沈黙 東京創元社」 (2015.8.17)

(67)  ダビィンチには謎がいっぱい
「真保裕一 レオナルドの扉 角川書店」 (2015.8.10)

(66)  戦後の台湾をもっと知ってみたい
「東山彰良 流(りゅう) 講談社」 (2015.8.4)

(65)  産業スパイって本当にいるんですよね。
「吉田修一 森は知っている 幻冬舎」 (2015.6.3)

(64)  ライオンさん、一度でも帰国していれば・・・
「さだまさし 風に立つライオン 幻冬舎文庫」 (2015.4.15)

(63)  それでも3億円が当たってみたい。
「川村元気 億男 マガジンハウス」 (2015.4.7)

(62)  神の子は知能が優れているのでしょうか。
「薬丸岳 神の子 上・下巻 光文社」 (2015.3.25)

(61)  米軍史上最強の狙撃手の自伝です
「クリス・カイル アメリカン・スナイパー ハヤカワ文庫」 (2015.3.10)

(60)  戦隊ヒーローに憧れませんでしたか
「阿部和重・伊坂幸太郎合作 キャプテン・サンダーボルト 文藝春秋」 (2015.3.3)

(59)  裁判員裁判について勉強しよう。
「法坂一広 最終陳述 宝島社」 (2015.2.17)

(58)  死を目前にした男の生きざまとは
「殉愛 百田尚樹 幻冬舎」 (2014.11.27)

(57)  裁判官って普通の人と違うんですか
「黒木亮 法服の王国・小説裁判官(上)(下) 産経新聞出版」 (2014.10.29)

(56) 植物状態から生還したらどうなる?
「真保裕一 奇跡の人 新潮社文庫」 (2013.12.25)

(55) 時をかける手紙
「東野圭吾 ナミヤ雑貨店の奇蹟 角川書店」 (2013.12.11)

(54) 人類の世紀末を想像できますか
「極北 マーセル・セロー  中央公論新社」 (2013.12.2)

(53) パンデミックをご存じですか?
「生存者ゼロ 安生正 宝島社」 (2013.11.21)

(52) 海外で亡くなった人はどのようにして帰国するのでしょうか
「エンジェルフライト 国際霊柩送還士 佐々涼子 集英社」 (2013.11.13)

(51) 倍返しと土下座で著名な半沢直樹の続編です。
「ロスジェネの逆襲 池井戸潤 ダイヤモンド社」 (2013.11.1)

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番外編
スコットランドゴルフ紀行

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