弁護士中山の「私の一冊」

国会議員のお仕事 (2012.11.23)

「タナボタ」 高嶋哲夫 幻冬舎

 

  ちまたでは,民主党野田首相がバカ正直に(?)というか自民党との公約どおりに衆議院を解散してしまいました。ちょっとかっこよかったけど。それで年内に衆議院総選挙が行われることになりましたが,関係ないけど石原さんの後釜の都知事選も同日投票だそうです。

  戦後間もない吉田茂首相の時に「バカヤロー解散」なんてのがありましたが,世に解散総選挙のことを「政変」と呼ぶならば,今回の政変・解散は「バカ正直解散」で決まりでしょうか。

  こんなご時世ですので,今回は少しだけ政治の世界がわかる本を紹介したいと思います。もちろん読み易くてオモシロイ本です。これさえ読めば,爆笑しながら政治の基本的な仕組みが分かるというオススメの一冊です

  さて国の財政はといいますと,1年あたりの国家の支出実績は90数兆円となっていますが,日本という国は累積でなんと1000兆円もの赤字を抱え込んでいることをご存じでしょうか。ありていに言うと借金が1000兆円以上もあるということなんです。これって1億人の国民がひとり100万円手出ししてやっと返済できる額なんですよね。まさに天文学的借金です。
実は日本も,ギリシャのようにいつ財政破綻してもおかしくないレベルにまでなっているんです。

  そこでこの巨額な赤字を解消するためにはどうすれば良いでしょうか。

  誰でもわかる単純な答えとしては,国の黒字収入を増やして弁済に充てること,そのためには国の収入である税収入を増やすしかないので,国民の負担において税金を上げて国の収入を爆発的に増やすか,国の支出を大幅に減額させるしかありませんよね。

  そう,消費税増額は,まさに収入たる税金を上げようとことですが,国民に直接に平等に今以上の負担を強いることになりますから,これを推進する議員さんは一部国民からは嫌われのは間違いなく,辛い立場に立たされることとなります。

  前提として無駄な支出をたくさん減らせないかという観点からは,公務員の給与や退職金を削減することとか,これまでにもいろいろな行政改革が検討されてきております。折しも投票する1票の価値の格差を問題とする議員定数不均衡の問題が取り上げられていますが,ちょって待って,それよりもそもそも日本という国は国会議員の数が多すぎると思いませんか。

  国会議員にかかる経費は,給料だけでもひとりあたり年間約2200万円にもなります。文書・通信・交通・滞在費から,立法事務費,政党助成金,公設秘書にその他諸々の費用で議員一人当たりにかかる直接経費は年間,軽く1億円は超えてしまいます。人件費はどこの世界でも直接のコストダウンに繋がりますが,国会議員が一人減れば1億円の節約になるわけです。

  日本の国会議員は現在何人いるかご存じですか。衆議院議員が480人で参議院議員が242人います。あわせて722名ということになりますが,これって多いか少ないか,どう思われますか。

  ちなみに,かの同盟国アメリカ合衆国は,人口で日本より約3倍多く,国土に至っては24倍広いという超大国規模にも拘わらず,国会議員の数は上院議員で100名,下院議員で435名あわせて535名です。なんと日本より約200名も少ないんですね。これってどういうこと?おかしいと思いませんか?

  もちろん国会議員は選挙によって,直接われわれ国民が選んでいるわけですが,ステータス高い我らが国会議員さんは,本当にその地位・身分にふさわしい仕事をしていただいているのでしょうか・・・多いに疑問を持ってください。

  さて本書のストーリーですが,民主党が政権を獲った前回の選挙ではありませんが,主人公は27歳にして衆議院比例代表区選挙の名簿98番目に登載されたプータロー大場大志くん。彼は時の政権政党に対する反対票の追い風に乗って,まさにタナボタ的に信じられない初当選を果たしてしまいます。晴れてプータローから国会議員になった大志くんの生活は怒濤のごとく変貌します。彼は,マジメにも議員としてふさわしい仕事をすべく,彼なりに政治の勉強をはじめます。また,議員として地方回りをするなかで,自分にも政治家の端くれとして出来ることがあるのではないかと思い始めます。そして世の中の仕組みを少しでも変えるために一議員として議案を提出して国会に諮る議員立法に挑みます。こうして私たち読者は,素人1年生議員の主人公大志くんの活動を通して,国会議員の恵まれた待遇の詳細,それに報いるために本来なすべき国会議員のお仕事の実態とはどういうものなのかについて知ることになります。また,物語には現在の政治情勢を揶揄するかのように,現実の政治の世界の,あっ,この人だとすぐわかってしまう人物が仮名で登場してきます。まさに我が国で行われている派閥政治とはどんなものなのか,政治家に必要な能力とはなんなのか,その他もろもろ,実に呆れる内容がつまびらかにされていきます。笑いなしでは読破できない一冊です。わずか228頁です。是非,年末の衆議院議員選挙前に一読してはいかがでしょうか。そして,皆さん,今度の選挙には必ずや投票に行きましょう(了)。

過去のコラム

(90)  メンタルなことで仕事が行き詰っていませんか
「北川恵海 ちょっと今から仕事やめてくる メディアワークス文庫」 (2017.9.11)

(89)  池井戸ファンにおススメの一冊です。
「池井戸潤 アキラとあきら 徳間文庫」 (2017.8.22)

(88)  生まれ変わりを信じますか。
「佐藤正午さんの 月の満ち欠け 岩波書店」 (2017.7.12)

(87)  アル・カポネ,ジョン・デリンジャーといえば?
「スティーヴン・ハンター Gマン 宿命の銃弾(上・下) 扶桑社ミステリー」 (2017.6.20)

(86)  もしも過去の事実を改変できるとしたら
「梶尾真治 クロノス・ジョウンターの伝説 徳間文庫」 (2017.5.16)

(85)  もしも人間の知能を人工的に高めることができるとしたら
「ダニエル・キイス アルジャーノンに花束を ハヤカワ文庫」 (2017.4.11)

(84)  NHKさん、シュンスケを大河ドラマの主役にしてください
「門井慶喜 シュンスケ 角川文庫」 (2017.3.30)

(83)  純な気持ちでお読みください。
「住野よる 君の膵臓を食べたい 双葉社」 (2017.1.20)

(番外編)  司法修習生はどんな本を読んでいるのか
「伊坂幸太郎 サブマリン 講談社」 (2016.12.16)

(82)  ピカソのキュビズムって何?
「原田マハ 暗幕のゲルニカ 新潮社」 (2016.11.21)

(81)  家康は僻地江戸をどのように建設したのでしょうか
「門井慶喜(かどい よしのぶ) 家康、江戸を建てる 祥伝社」 (2016.10.13)

(80)  ランニングシューズ業界を覗いてみましょう
「池井戸潤 陸王 集英社」 (2016.9.9)

(79)  ピアノの調律師って?
「宮下奈都 羊と鋼の森 文藝春秋」 (2016.6.17)

(78)  人はなぜ山に登るのか
「夢枕獏 神々の山嶺(いただき) 上下巻、集英社文庫」 (2016.5.31)

(77)  ガラ携って何?
「相場英雄 ガラパゴス上・下巻 小学館」 (2016.4.11)

(76)  尖閣問題について考えてみましょう。
「青木俊 尖閣ゲーム 幻冬舎」 (2016.3.25)

(75)  宗教にはまったことはありますか。
「中村文則 教団X 集英社」 (2016.3.11)

(74)  中国にもつい100年前まで皇帝がいました。
「浅田次郎 蒼穹の昴 講談社」 (2016.1.26)

(73)  「仁義なき戦い」の菅原文太はかっこよかった。
「柚月裕子 孤狼の血 角川書店」 (2015.12.3)

(72)  どうして山に登るのか
「下村敦史 生還者 講談社」 (2015.12.3)

(71)  お互い愛情もない夫婦、そんな中、相手を突然亡くしたら・・・
「西川美和 永い言い訳 文芸春秋」 (2015.11.9)

(70)  復讐とは虚しいものですね
「ピエール・ルメートル その女アレックス 文春文庫」 (2015.10.29)

(69)  人魚姫ならぬ金魚姫はいかがですか
「萩原浩(おぎわら ひろし) 金魚姫 角川書店」 (2015.10.15)

(68)  突然、あなたの秘密が本で暴かれたら?
「ルネ・ナイト 夏の沈黙 東京創元社」 (2015.8.17)

(67)  ダビィンチには謎がいっぱい
「真保裕一 レオナルドの扉 角川書店」 (2015.8.10)

(66)  戦後の台湾をもっと知ってみたい
「東山彰良 流(りゅう) 講談社」 (2015.8.4)

(65)  産業スパイって本当にいるんですよね。
「吉田修一 森は知っている 幻冬舎」 (2015.6.3)

(64)  ライオンさん、一度でも帰国していれば・・・
「さだまさし 風に立つライオン 幻冬舎文庫」 (2015.4.15)

(63)  それでも3億円が当たってみたい。
「川村元気 億男 マガジンハウス」 (2015.4.7)

(62)  神の子は知能が優れているのでしょうか。
「薬丸岳 神の子 上・下巻 光文社」 (2015.3.25)

(61)  米軍史上最強の狙撃手の自伝です
「クリス・カイル アメリカン・スナイパー ハヤカワ文庫」 (2015.3.10)

(60)  戦隊ヒーローに憧れませんでしたか
「阿部和重・伊坂幸太郎合作 キャプテン・サンダーボルト 文藝春秋」 (2015.3.3)

(59)  裁判員裁判について勉強しよう。
「法坂一広 最終陳述 宝島社」 (2015.2.17)

(58)  死を目前にした男の生きざまとは
「殉愛 百田尚樹 幻冬舎」 (2014.11.27)

(57)  裁判官って普通の人と違うんですか
「黒木亮 法服の王国・小説裁判官(上)(下) 産経新聞出版」 (2014.10.29)

(56) 植物状態から生還したらどうなる?
「真保裕一 奇跡の人 新潮社文庫」 (2013.12.25)

(55) 時をかける手紙
「東野圭吾 ナミヤ雑貨店の奇蹟 角川書店」 (2013.12.11)

(54) 人類の世紀末を想像できますか
「極北 マーセル・セロー  中央公論新社」 (2013.12.2)

(53) パンデミックをご存じですか?
「生存者ゼロ 安生正 宝島社」 (2013.11.21)

(52) 海外で亡くなった人はどのようにして帰国するのでしょうか
「エンジェルフライト 国際霊柩送還士 佐々涼子 集英社」 (2013.11.13)

(51) 倍返しと土下座で著名な半沢直樹の続編です。
「ロスジェネの逆襲 池井戸潤 ダイヤモンド社」 (2013.11.1)

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番外編
スコットランドゴルフ紀行

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