弁護士中山の「私の一冊」

現実化しているサイバーテロ (2019.2.12)

ビル・クリントン&ジェイムス・パターソン共著「大統領失踪」上下巻 早川書房

本作品は、昨年6月全米で発刊されて以来、発行部数は既に100万部を超えており、全世界に向けても出版されていますから,この数は膨大なものとなることが予測されます。もちろんニューヨークタイムスのベストセラーでも1位、書店や各種メディアの書籍ランキングも1位となっています。

さて著者のご紹介です。まず、ビル・クリントンは、1946年アーカンソン州生まれの72歳。彼は弁護士資格を取った後、ロースクールで教鞭を執る傍ら政治の世界に入ります。そして、わずか31歳にしてアーカンソン州の司法長官に就任、同州知事を歴任した後、大統領選に打って出て、46歳で第42代合衆国大統領に就任します。満期の2期務めて54歳で退任後、彼の大統領としての回顧録であり半生の自伝である「マイ・ライフ」を刊行してこれがベストセラーとなりました。ですから小説としては本作品が初めてということになります。相方のジェイムス・パターソンは、1947年ニューヨーク州生まれの71歳、大手広告会社のクリエイティブディレクターを務める傍ら29歳にして処女作「ナッシュビルの殺し屋」で作家デビュー、同作品で最優秀新人賞に輝きました。以来デビュー後の約40年間でニューヨークタイムズのベストセラー1位になった回数で67回を数え、ギネスブックに認定されている超売れっ子作家です。

皆さん、サイバーテロというのをご存じでしょうか。

いまや現代社会は、コンピューターなしでは生活できない世の中になっています。しかし、コンピュターシステムは人的に作られたウィルスに感染することによって、正常に作動しなくなります。場合によっては乗っ取られてしまうことだってあります。ですから我々が日常的に使用しているパソコンですら、ウィルス対策ソフトをインストールして対応していますが、これが国家的な規模となると、その対策も一筋縄ではいきません。例えば、現実的に水道・電気・ガスなどのインフラ事業者の基幹システムがハッカーたちによりサイバー攻撃されたとします。ウィルス感染してシステムが白紙化されてしまえば、これらはのインフラはすべて供給停止にすら追い込まれてしまうのです。想像してみてください。電気・水道・ガスのない生活、あたかも原始時代に逆戻りです。これらに加えて究極的には軍事システム、ミサイル防衛システム、核ミサイルの発射ボタンでさえ、コンピューターシステムによって運営されているのです。サイバーテロ対策が最重要視されているゆえんです。
現在、このサイバーテロの攻撃対象としてもっとも危険に晒されているのがアメリカとされています。現実にも数々の事件が全世界で起きています。

ということで、本作品はアメリカとサイバーテロリストとの戦いを描いたものです。
原題は「THE PRESIDET IS MISSING」で、直訳すればそのまま「大統領失踪」です。つまり、大統領が失踪するのですが、それはアメリカをサイバーテロから守ることと関連していたのです。

さて、あらすじです。冒頭、主人公である現職大統領のジョナサン・リンカーン・ダンカンは、アメリカ下院特別調査委員会から大統領としての地位を剥奪する弾劾裁判にかけよられようとして厳しく問責されるシーンから始まります。ダンカンにかけられた嫌疑は、大統領がテロリスト集団である「ジハードの息子たち」のリーダーと個別に電話した傍受記録の存在が発覚し、大統領とテロリストのリーダーが内通しているのではないかというものでした。ダンカンの側近はその主張に対して、大統領特権を行使して国家の安全に対する危機に直結するとして、答弁を拒絶するという選択をするようアドバイスします。
このとき既に水面下で、まさに大規模な進行中のサイバーテロの情報を得ており、大統領およびその側近はその対応に追われていたのでした。だから本当は委員会どころではなかったのでした。

まもなくテロ情報に対応する過程で、ダンカンは数少ない側近しか知らない極秘情報が敵に漏れていることを知ります。周囲の誰を信じてよいかわからなくなったダンカンは、密かにホワイトハウスを抜け出し、自らの居場所を隠すことで失踪することとします。そうしてダンカンは、サイバーテロに対抗するために、最強のハッカーをはじめとするプロを集めるとともにイスラエル、ドイツ、ロシアなど各国情報局筋に協力を求めます。

はたして、
サイバーテロを仕掛けてきたのは誰なのか?
黒幕は?
テロを防ぐことはできるのか?
裏切り者は誰なのか?

最後の最後までアップテンポで緊張感あふれる展開となっていますがいかがでしょうか。。

著者のクリントンさんは、たぶん自分を主人公に置き換えて元大統領としての知識および経験値を最大限に生かして創作されたのだと推測します。それだけに迫真性を存分に楽しむことができました
読み始めたら止まらない小説に久しぶりに出会い、上下巻併せて週末2日間で一気読みしました。
どうか皆さんも試してみてください。 

本日、ご紹介したのはビル・クリントン、ジェイムス・パターソン共著 「大統領失踪」上下巻、早川書房から2018年12月5日発刊、上下巻合わせて656頁3888円でした(了)。

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