弁護士中山の「私の一冊」

我々はどこから来て、どこに行くのか (2019.1.30)

ダン・ブラウン「オリジン」上・下巻 角川書店

テーマは宗教と科学です。

世界でもっとも信仰する人が多いといわれるキリスト教では当然、全知全能の神様が存在していて、イエス・キリストは神が使わした子であり、救世主なのです。数々の奇跡を起こすキリストが現世に遣わされる前の世界を記録した旧約聖書の創世記によれば、神は6日間かけて天地を創造し、初めの人間としてアダムを造り、さらにイプを造ったとされています。ですからキリスト教では人類の生命の起源は神にあるわけです。だから宗派によっては神の意思に反する妊娠中絶がタブー視されるわけです。
これに対し、生物は進化を重ねて現在に至ったとするダーウインの進化論は現在では科学的に当然視とされていますが、キリスト教の教えとは相反することになるわけです。

それでは、生命の起源とは?

「我々はどこから来て、どこに行くのか」

これに科学的観点から取り組んだのが、本作品「オリジン」、直訳すれば「起源」です。すごいテーマですよね。

まずは、いつものように著者の紹介です。ダン・ブラウンさんは1965年アメリカ、ニューハンプシャー生まれです。カレッジの名門アマースト大学を卒業後、英語教師を経て作家に転身します。父は数学者、母は敬虔なクリスチャンで宗教音楽家、この両極端な両親を持つ家庭で生まれ育ったことが彼の人生に大きな影響を与えたといいます。そう、彼は宗教には否定的とも受け取れます。
彼の作品は、宗教象徴学者ロバート・ラングドンを主人公とするシリーズ1作目「天使と悪魔」で2000年にベストセラー作家の仲間入りをします。シリーズ第2作の「ダビンチ・コード」以後、「ロスト・シンボル」「インフェルノ」の4作で全世界累計販売部数でなんと2億冊に達しているといいます。その小説は今や56か国語に翻訳されています。
映画ではローバート・ラングドンをトム・ハンクスが演じて、映画作品すべてが大ヒットしたのはご存知の通りです。

本作品「オリジン」はラングドンシリーズの第5作目となります。

舞台はスペインのビルバオ、マドリード、セビリア、バルセロナです。あの未完のサグラダ・ファミリアも出てきます。
ストーリーですが、ラングドンは元教え子のカーシュに招かれ、スペインのビルバオ・グッゲンハイム美術館を訪れていました。教え子カーシュは、コンピューター科学者として名声を得ており、その奇抜な予測から預言者とまで異名をとるようになっていました。ラングドンが訪れた美術館内では、招待客一人一人に音声ガイドがついており、ガイドはカーシュが作り上げた「ウィンストン」と名乗る人工頭脳AIだったのです。
カーシュは美術館でのイベントで「我々はどこから来たのか、我々はどこに行くのか」というテーマの衝撃的なプレゼンテーション映像を流そうとしていました。この問題は、人類にとって最も根源的な二つの問題に答えようとするもので、既存の宗教を根底から覆すものであり、バチカンをはじめとして宗教界は映像の公開に強く反対し、カーシュは脅迫を受け身の危険を感じるまでになっていました。
さてイベントは始まり、カーシュはこの映像をネットを通じ全世界に配信しようとしていました。壇上に立つカーシュ、ラングドンをはじめとする大勢の招待客が見守る中、一発の銃声が鳴り響きます。そこに銃弾に斃れるカーシュがいました。
目の前で教え子を暗殺されたラングドンは、悲しみと怒りに震えます。そうして犯人を見つけ出し、カーシュの遺志を継いで問題の映像を全世界へ公開しようと決意します。
しかし、映像を公開するためには、コントローラーとなるカーシュのスマートフォンが必要であり、さらにこのスマートフォンを起動するにはパスワードを打ち込む必要があるのでした。パスワードは47文字からなっています。
カーシュの暗殺は果たして宗教界によるものなのか、ラングドンはパスワードを解明することができるのか、そして犯人に行きつけることができるのか、さらには「我々はどこからきて、どこへ行くのか」という究極の答えを得ることができるのか、といった感じで、ジェットコースターのように速い展開でストーリーは進んでいきます。

いかがでしょうか。

ダン・ブラウンさんは、本作品出版記念イベントとして昨年来日してあの池上さんと対談していますが、次作あたりで日本を舞台にしたラングドンシリーズ第6作実現の可能性についてほのめかせていました。

本日、ご紹介したのはダン・ブラウン著 「オリジン」上下巻、角川書店から2018年2月28日発刊、上下巻合わせて680ページ3888円です(了)。

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